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生活 育児

自分の人生、命を削ってまで子育てすることにどんな価値がある?わからなくなったときに読みたい本

三女がまだ生まれていなかった頃の話です。

私は幼い長女と次女の世話に追われていました。毎日毎日繰り返される育児は私にとって苦痛でしかありませんでした。必要なことだから、親であり保護者である責任は果たさなければいけないことだからと自分に言い聞かせ、子どもを育てるのを選択したのは自分なのだからこれは自分のためにしていることだし、無理矢理にでも自分と子どもたちとが今日も無事に生き抜かなければいけない、とにかく一日を無事に過ごせればそれでいいのだと思い込むようにしていました。

私一人なら何ということのない日常茶飯事も、子どもにとっては難しかったり手伝いがなければできなかったりします。何から何までを手伝ったり、すべてをやってあげれば簡単に終わらせることはできるかもしれませんが、それでは子どもの成長を阻害してしまいます。多少時間がかかったとしても、子ども自らができるように仕向けたりあえて練習させなければいけません。でも、彼らのスピードに合わせるとどうしても待ち時間ができてしまいます。待っている間にあれもこれも本当はしたいのにしなければいけないのにと気ばかり焦っていました。

子どもの仕上げ歯磨きをしていたときのことです。

私はふと、「これから何年も仕上げ磨きを続けることになる。一体どれだけの時間を仕上げ磨きに費やすのだろう」と疑問に思いました。

人生の中で長い付き合いになる歯を健康に保つことは重要です。私が子どものころよりもさらに歯の重要性が説かれています。「乳歯は永久歯に生え変わるから、虫歯になっても大丈夫」なんて昔の常識は通用しません。乳歯を健康に保つことで、土台となる歯茎が健康に育ち、結果として永久歯も健康に生え変わると言われています。子どもを虫歯にさせないためには、虫歯の原因を増やすような食生活を避けるとともに、歯磨きを徹底するしかありません。ところが、子どもは歯磨きが下手です。そもそも歯磨きが嫌いで面倒くさいものだと考えています。効果的な歯磨き方法も知らなければ、知ったとしても実行できません。だから、保護者による仕上げ磨きが必要なのです。朝昼晩必ずとまで言わずとも、夜寝る前の仕上げ歯磨きだけは忘れずに行いたいものです。

ということで、私は長女と次女の仕上げ歯磨きを毎日のように行っていました。歯が生えてきた頃は毎回毎回私が磨き、成長するにつれ自分で磨かせ…と、私が子どもの歯磨きに介入する回数は減っていきましたが、結局夜寝る前の仕上げ磨きは小学校を卒業するまで続きました。

話は戻り、「仕上げ磨きには一体どれくらいの時間を費やすのか?」です。

毎日の生活の中では1回につきせいぜい5分程度でしょう。私が「仕上げ磨きするよ~!」と言って座り、彼らが「はーい」と言ってから来るまでの時間、あぐらをかいた私の足の上に寝転んで口を「あー」と開けるまでの時間を含めるともう少しかかるかもしれませんが、まあその程度の時間です。

これを2人分、毎日行うわけですね。確かに一日の中のわずかな時間ではあるのですが、わずかとは言っても限りある時間の一部であることに違いはありません。この限りある時間は、子どもの仕上げ磨きの時間ではあるのですが、子どもだけではなく私の時間をも使っているのです。私の限りある人生の中の時間であり、自分の命を削る行為でもあるのです。

子どもの将来を考えれば必要な行為であることは理解できます。健康な歯を保つことで健康寿命を延ばすことにつながるのであれば、生命を維持するために必要な行為であり、つまりは子どもの命を守る親として保護者として当然の行為であり、仕上げ磨きをすることは保護者としての責任を果たすことにつながるということも理解できます。子どもの命を守ることは子孫の繁栄につながるため、結果として私自身の利益にもつながり、仕上げ磨きという行為が私にとっても必要な行為なのであろうとも考えます。

でも!でも!でもです。子どもたちは毎日のように仕上げ磨きを面倒くさがり、したらしたで嫌がり、口を開けろと言ってもうまく開けられず、閉じてほしい時にうまく閉じられず、成長とともにだんだん上手にできるようになっているとは言えとにかく手間でしかない仕上げ磨き…。こんな仕上げ磨きなんかなければもっと他のことに時間を使うこともできただろうにと毎回のようにため息をつきたくなるこの時間は辛すぎます。この時間は本当に私にとって大事なんだろうか必要なことなんだろうかと、いくらいろいろな仕上げ磨きの必要性を考えても、フツフツとそれは怒りにも似たというよりは怒りそのものが少しずつたまっていくことは止められず、不満を抑えつけようとジィっと我慢すればするほどに、ほんのささいなきっかけで爆発してしまいそうなこの気持ちをどうすることもできません。

生後7か月頃から歯磨きが始まり2歳頃までは毎回私が歯磨きをし、徐々に自分で磨かせる回数を増やし、そこから小学校卒業までは夜に仕上げ磨きという感じだったと思います。若干育児慣れした三女はもう少し自分で磨かせるのが早かった気がしますが、長女次女のときは何ていうかもっと心に余裕はない感じで仕上げ磨きしていました。ちなみに長女と次女は約1歳3か月離れており、いわゆる年子です。実際は私だけではなく妻も仕上げ磨きを行っていたので、すべての仕上げ磨き時間を私だけが負担していたわけではありませんが、毎日のように事細かに記録していたわけでもなく、正確な時間は今となっては不明です。

約1年(365日)と5か月間(150日) × 3回 + 約10年(3650日) × 1回で4165回
すべて私担当ではなかったとしても、おそらく1.5人分程度は行っていたとして、× 1.5で6247.5回
待ち時間などを加味した仕上げ歯磨きにかかるおおよその平均時間を6分として、× 6で37485分…
時間に直すと、÷ 60で624.75時間
さらに一日にすると、÷ 24で約26日。
私の人生の中の一か月近い時間を、子どもの仕上げ歯磨きに費やすことになるのです。

いいのだろうか、いいのだろうか、本当にこんなんでいいのか、無駄じゃないのか、本当に必要なのか、無駄ではないのかと計算結果を見てウーンとうなってしまいました。

そんな感じで子育てして過ごしていたときに、一冊の本と出会いました。

『モモ ミヒャエル・エンデ作』です。

本好きな長女がたしか3、4年頃、クリスマスプレゼントでサンタさんにもらったものだと記憶しているのですが、時期は前後しているかもしれません。私はこれもたしか小学校低学年頃だったと思うのですが、叔母に連れられて映画館で観たことがあり映画館に行ったという経験も含めて面白かったなぁという記憶だけが残っています。原作は読んだことがなく、「果てしない物語(ネバーエンディングストーリー)」などで有名な作者が書いた物語だとは、知りませんでした。

せっかくだから私も…と、ほぼ暇つぶし感覚で読み始めたのですが、面白かったので一気に読み切っちゃいました。その中でびっくりしたのが、前半で出てくる場面。それこそ私が「仕上げ磨きに何時間費やすのか?」と考えたことと同じような話があったのです。物語では灰色の男たちに「そんな無駄な時間を節約して時間を預ければもっと人生を有意義に生きられる」と言われた大人たちが、その助言に従って時間を預けるのだが…?と進んでいくのですがこれ以上のネタバレは余計なので詳しくは本を読んでくださいとしか言いようがないですけど、とにかく私にはもう衝撃的な部分でした。

実用書や啓もう書の類ではなく純粋に楽しむための少年少女向け物語なので、自分の悩みや疑問に対して「こんなときはこうしなさい」と言った明確な答えが示されているわけではありません。しかし、結末はどうなったの?というところまで含めて、私の心の中にこの物語が深く根付くことになりました。

仕上げ磨きをすることもなくなった長女、次女に代わり、現在は三女の仕上げ磨きをする毎日です。何年にも渡る育児生活のおかげで確かに育児スキルは上がっているものの、そもそもの器が小さいため、まったくもって余裕のある育児なんてできていない私で、毎日のようにプリプリと怒っては怒鳴り散らしています。育児なんて無駄なんじゃないか?という疑問もしょっちゅうです。

でも、今はそういう負の状態に陥ってしまったときは、もうどうしようもなくなってしまう前に本のことを思い出すようにしています。思い出すだけじゃあ何の解決にもなっていないんですけど、ほんのちょっとだけ落ち着いて自分を見つめなおすきっかけを作れる、そんな拠り所にはなっている気がします。

育児って大変ですよね。嫌になることもあると思います。自分の命を削ってまで子育てをすることに果たしてどんな意味や価値があるのか?と思い悩むこともあるでしょう。そんなときに一度読んでみて下さい。おすすめです。

『モモ ミヒャエル・エンデ作』→本はこちら

作成者: 真田夕起

koyukaisa.work」管理者の真田夕起(サナダ ユウキ)です。
私は、妻と長女(大1)、次女(高3)、三女(小3)と北海道札幌市白石区に住む主夫です。家事や育児、教育など生活全般の話題、遊びや創作系の話題を男目線から発信しています。

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趣味:かたづけ、ガーデニング、ギター練習、英語学習、ぬいぐるみ作り、パソコン。花粉、埃、ダニ、猫などほぼ一年中アレルギーでかゆくなったり咳が出たりします。特に春がきついです。その関係で果物やその他の食物、特にりんごや桃、さくらんぼ、豆乳などでかゆみが出るのが悲しいです。抗ヒスタミン薬と解熱・鎮痛薬のお世話になることが多いです。新型コロナウィルスのおかげで一般化したマスク生活が思ったよりもアレルギー対策に有効だったので、外出時マスクが定着しちゃいました。牛乳が大好きですが、温めないと下ります。幼少のころは体を動かすのが好きでしたが、スポーツはそれほど好きではありません。最近は運動不足がたたって、ちょっとしたことで体を痛めることが多いです。ぎっくり腰で入院したのをきっかけに、日常生活ではおなかに力を入れ続けることにしています。ガーデニングや外で焼き肉をするのは好きですが、基本的にインドア。折り紙、ブロック、プラモデル(パテや塗料は使っているが、最近は疎遠…)などは比較的長く続いています。家事と育児がらみでの興味の再発見や学びなおしが多い毎日を送っています。

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