まず最初に言っておくと、これはプロ向けの話ではありません。
ボイストレーニングを受けている人が読むと「いや、それは違うよ」となる可能性が高いので、そっと閉じてください。
ここで書くのは、私がAタイプビブラートを理解しようとして試行錯誤した結果「こうすると分かりやすかった」という体験ベースの話です。
人によってはまったく役に立たないかもしれないので、その点は注意してほしいです。
ただ、今までの説明がしっくりこなかったり、本を読んでも専門用語が理解できなかったり、そもそもビブラートの仕組みが謎のまま……という人には、もしかしたらヒントになるかもしれません。
私はこの方法で「なるほどこういうことか」と理解できて、そのまま練習にも使っています。
文章はかなり噛み砕いていて、しつこいくらい説明します。そのつもりで読んでもらえると助かります。
こんな人向け
・あごを動かすビブラートや、音程を上下させるタイプはできる
・腹式呼吸がよく分からない
・見本を聴いて真似してもビブラートがかからない
・本やネット動画を見ても理解できなかった
・ボイストレーニングを受けるほどではない
・すぐ結果が出なくてもOK(出るかもしれないけど)
・試行錯誤する覚悟はある(読むだけではできない)
こういう人向けの、体験ベースの話です。
留意点
ビブラートは「出そう」と思って出すというよりも、歌い方の状態によって“出る/出ない”が切り替わるタイプの技術です。
私自身、Aタイプを理解していく過程で「出る状態の歌い方」と「出さない状態の歌い方」がだんだん分かれてきました。
ですので、ビブラートをコントロールするというのは、この“状態の切り替え”を自分で扱えるようになることだと思っています。
2つの部位の組み合わせ
Aタイプビブラートは、出したい音程に対して、地声(おもて声)と裏声のバランスがちょうど取れたときに起こる“引っ張り合い”の揺れだと、今は理解しています。昔は「音程と音量の組み合わせで揺れるのかな」と思っていたのですが、練習していくうちに、地声と裏声の境目が釣り合った瞬間に自然と揺れが生まれるほうがしっくりくるようになりました。
地声だけで歌うと揺れはほとんど出ませんし、裏声だけでも揺れません。両方の成分がちょうどいい割合で混ざって、どちらにも引っ張られている状態になると、声が“安定しようとして揺れる”感じになります。これが、私の中ではAタイプビブラートの正体です。
もちろん、喉の調整や息の流れも関係しています。ただ、今のところの理解では「地声と裏声のバランス」が中心にあって、その結果として喉や息の使い方が決まってくる、という順番のほうが自然だと感じています。
のどの調節
のどの使い方については「弓場徹のボイストレーニング本」がとても分かりやすいので、詳しく知りたい人はそちらを参照してほしいです。ただ、それだけだとこの記事の流れが途切れてしまうので、ここではビブラートの観点から、のどの調節について私の体験ベースで補足します。
まず、出したい音程に合わせて、のど周辺の筋肉を使って声の高さを調節しています。これが分かりにくい人は「そういうものなんだ」と一度受け入れてもらえると進みやすいです。音量の調節ができる人は、こののどの調節を試している途中で、勝手にビブラートが出る瞬間があると思います。
オモテ声とウラ声
地声(オモテ声)は、のどが少し締まった状態で出る声です。犬が低く「うーっ」とうなるような声を出すと、のどの前面が後ろに引かれるような感覚があり、管が狭くなったところを空気が通って震える感じになります。これがオモテ声の状態です。
一方、裏声(ウラ声)は、のどが開いた状態で出る声です。声を出さずに「はー」と息だけを出すときの、あの開いた感覚に近いです。その状態のまま高い声で「はー」と言うと、息が長続きしないけれど、のどが開いた軽い声になります。これがウラ声です。
低い音はオモテ声が出しやすく、高い音はウラ声が出しやすいのですが、どちらかしか使えないわけではありません。ただ、低い音をウラ声で出すと息がすぐ切れますし、高い音をオモテ声で出すと叫び声になりやすく、のどを痛める危険があります。
オモテとウラを混ぜる
実際の歌では、オモテ声とウラ声を少しずつ混ぜながら使います。低い音ならオモテ声に少しウラ声を混ぜ、高い音ならウラ声に少しオモテ声を混ぜる、という調節です。のどの周辺の筋肉が閉まったり開いたりしながら、完全なオモテでも完全なウラでもない“混ざった声”になります。
この混ざり具合を意識して調節できるようになると、声の状態を細かくコントロールできるようになります。普段の話し声や歌いやすい高さの声でも、混ざり具合を変えてみると練習になります。モノマネは特におすすめで、普段とは違う混ざり具合を試すのに向いています。
ミックスボイスという言葉がありますが、極端にウラ声に寄せれば息しか出ませんし、極端にオモテ声に寄せればうなり声になります。誰でも最初から何らかの混ざり具合で声を出しているので、気負う必要はありません。意識して混ぜ具合を調節できるようになることが目標です。
※息の量についてもまったく無関係ではありませんが、Aタイプビブラートの中心は「地声と裏声のバランス」にあると感じています。息の調節は、そのバランスを支える補助的な役割という位置づけです。
地声と裏声のバランスが揺れを生む
Aタイプビブラートは、地声(オモテ声)と裏声(ウラ声)の成分がちょうど釣り合ったときに生まれる揺れだと、今は理解しています。どちらか一方に強く寄っているときは揺れません。地声だけで歌えばまっすぐな声になりますし、裏声だけでもまっすぐな声になります。両方の成分が混ざって、どちらにも引っ張られている状態になると、声が安定しようとして小さく揺れます。この揺れがAタイプビブラートの正体だと感じています。
この「釣り合い」は、のどの周辺の筋肉が閉じたり開いたりする調節によって生まれます。低い音では地声が優勢になりやすく、高い音では裏声が優勢になりやすいのですが、歌っている高さに合わせて少しずつ混ぜ具合を変えることで、地声と裏声のバランスを取ることができます。混ざり具合がちょうどよくなると、意識しなくても声が揺れ始める瞬間があります。
ビブラートを「出そう」と思って出すというよりも、声の状態が「揺れやすい位置」に入ったときに自然と揺れる、というほうが近いです。地声と裏声の混ざり具合を調節できるようになると、この“揺れやすい位置”に声を持っていくことができるようになります。
のどと息のバランスを整える
ここまでの説明で、地声と裏声の混ざり具合がビブラートの中心だという話をしてきました。実際にビブラートが出るときには、のどの開け閉め具合と息の量が、その混ざり具合にちょうど合っている状態になっています。
音程を変えたときにビブラートが出なくなることがありますが、その場合は、のどの開き具合を少し変えたり、息の量を増減させると、再び揺れが生まれることがあります。息の量はビブラートの“本体”ではありませんが、混ざり具合を支える補助として働いていると感じています。
のどの動きについて観察してみると、裏声寄りの状態から、少しだけ地声成分を足す方向(ウラ→オモテ)に動かしたときのほうが、ビブラートが出やすいことが多いです。逆にオモテ→ウラの方向は揺れが出にくく、息が抜けてしまうことがあります。
ビブラートを出したい場所では、一度裏声寄りの声を出してから、軽くオモテ成分を足すようにのどを調節すると、揺れやすい位置に入りやすくなります。強くオモテに寄せる必要はなく、ほんの少し混ぜるだけで十分です。声を伸ばしている途中でビブラートをかけたい場合も、裏声寄りを維持しておいて、タイミングを見てオモテ成分を足すとコントロールしやすくなります。
息の量については、普段の音量にこだわらず、少し小さくしたり大きくしたりすると、揺れやすい位置に入ることがあります。ビブラートが出る音量が見つかったら、その音量がその声の混ざり具合に合っているということです。マイクを使う場合は最終的な音量は調整できるので、素の音量は気にしなくても大丈夫です。
高音域ではBタイプが自然になる
Aタイプビブラートは、地声と裏声の成分が釣り合ったときに生まれる揺れですが、高音域ではそのバランスを取ることが難しくなります。裏声成分がほぼ優勢になり、地声を混ぜる余地が少なくなるため、Aタイプの揺れを作りにくくなります。
そのため、高い音でビブラートをかけようとすると、実際にはBタイプのほうが自然に出ます。Bタイプは、音符のリズムに合わせて息の強弱をつけることで揺れを作る方法で、ほぼ裏声寄りの状態でも使えるのが特徴です。私自身も、高音域ではAタイプよりBタイプのほうが安定して出せますし、無理にAタイプに寄せようとすると負荷が大きくなると感じています。
Aタイプを使いたい場合は、裏声寄りの状態から少しだけ地声成分を足すようにのどを調節すると、Aタイプの揺れに近づきます。ただし、高音域では無理にAタイプにこだわらず、自然に出る揺れを使うほうが安全で再現性も高いと思います。
※ノンビブラートについては、ビブラートが出るバランスを外せば自然に出なくなります。のどの混ざり具合や息の量を少し変えるだけで調整できます。
ということで、Aタイプビブラートの話はここまでです。読んでくださってありがとうございました。
